獣語❶

 

 

 
     ❶
 
 
『―――ねえ、不動くん』
『君は人を幸せにできる男になりなよ。そうしたら―――』
 
 
 彼女は傷だらけの魂だった。
 だから誰より人の心の傷に優しかった。
 そんな彼女だったから、十冴()(じゅうご)めて恋をした。
 彼女が仲間達と共に消えたあの日、最後に贈られた言葉があった。
 今も十冴の胸に突き刺さる、それは深い茨の刺であり、大切な約束―――
 
 
『そうしたら、いつか私が、あなたを終らせてあげるから』